川崎重工業や岩谷産業などが日豪間の液化水素輸送の実証実験で使用した
運搬船「すいそ ふろんてぃあ」=4月9日、神戸市中央区
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緊迫するウクライナ情勢を受け、液化天然ガス(LNG)や石炭など化石燃料の安定供給に不安が広がる中、燃焼時に二酸化炭素を出さない水素の燃料への活用に向けた取り組みが進んでいる。9日には、日本とオーストラリア間で液化水素を運搬する実証実験を記念した式典が神戸市で開かれ、岸田文雄首相ら政府関係者が出席。水素の導入拡大に向けた支援策を示唆するなど、早期商用化への期待が高まっている。
式典で岸田首相は「ウクライナ情勢を背景にこれまでのエネルギー供給のあり方が大きく問われている」と指摘。その上で「安定供給と両立してカーボンニュートラル(脱炭素)を実現する必要があり、そのカギが水素だ」と述べ、大胆な支援策を行うと説明した。
今回の実証実験は世界初の液化水素運搬船を使って国際間での大量輸送を行うもので、川崎重工業や岩谷産業など7社が共同で実施。運搬船「すいそ ふろんてぃあ」は昨年12月に基地がある神戸港を出発し、オーストラリアで採掘される安価な石炭「褐炭」をガス化して現地で製造した液化水素を積み、今年2月に神戸へ帰港した。
将来的な液化水素の供給網構築に向けてはコスト面が最大の課題で、船やタンクを大型化するなどして輸送費を下げる必要がある。日豪間でのテスト輸送は今後も行う予定で、川崎重工と岩谷は2030年ごろの商用化を目指している。
水素は産業や家庭などさまざまな分野で活用できることから、国のエネルギー基本計画でも「カーボンニュートラル時代において中心的な役割が期待される」と位置付けられる。政府はロシア産石炭の輸入を段階的に縮減、禁止する方針で、脱炭素社会を目指す中、化石燃料に代わるエネルギーとして活用が急がれる。
筆者:岡本祐大(産経新聞)
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2022年4月9日付産経新聞【主張】を転載しています